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大阪展を振り返って
 

西山夘三と日本のすまい展― 20世紀・すまいのアーカイブス

■神戸芸術工科大学学長・鈴木成文先生のHPより
「西山夘三と日本のすまい展」を再訪する。氏の残した10万枚に上る写真から 1万5千枚を選んでデジタルデータベース化し、更に350枚を選び「映像で見る日本のすまい」姫路工大松本滋教授の分かり易い解説で農家・町家・社宅・公営・モダンリビングなど、戦前戦後70年間の住居の変遷発展を辿る。歴史性・地域性・階層性の視点で捉えた姿は圧巻である。最後に福山女子短大の住田昌二学長の明快な解説、戦中期の住宅計画学確立への指向、戦後復興期の住宅政策批判、高度成長期の都市住居構想計画、そして晩年には町づくり運動と著述のまとめ。社会の問題の渦中でその方向性を明示された姿は偉大だ。

■大阪会場2000年10月2日(月)〜10月22日(日)
梅田スカイビル40階 空中展望台ギャラリー
 山脈にわき出た泉のみなもと 政井孝道(朝日新聞入編集委員)
「西山夘三と日本のすまい展」が大阪で始まったという記事はオープンの翌10月3日の朝刊に四段で載りました(朝日新聞大阪本社発行セット版)。この種の記事では大きな扱いで、西山さんの知名度と同時に、門下生がここまでしたことへの驚きがあったのでしょう。
西山さんはまず「研究者」と評価されますが、取材の現場では「すぐれた教育者」を実感することがよくありました。とくに亡くなった一年後に発生した阪神大震災の直後は、被災地で地道に復興策の提言や調査を続ける大学教官や研究者のなかに西山門下が実にたくさんいることに驚きました。研究と教育の一体化こそ「西山山脈」の真価であり、「西山文庫」はその山脈の「源泉」を明らかにしてくれるかもしれません。
 京都の景観論争がたけなわだった1991年秋、朝日新聞の週刊誌『アエラ』から「現代の肖像」の執筆を頼まれ、西山宅に通ったことがあります。玄関のすぐそばの一畳ほどの狭い部屋で向き合い、耳の遠い先生に大声で質問する日が続いたあと、最後に二階の書斎でワープロを打つ姿をフリーのカメラマン、六田知弘さんが何枚も撮りました。座敷は資料の山です。「これどないしはるんですか」と馬鹿な質問をしたら、「死ぬまでに整理する」。それだけで二年かかるから自宅再建の設計はあきらめた、というお返事。その時は研究に必要な資料類だと思っていたのですが、自筆の作品や著作が多いと後に知りました。92年秋、『大正の中学生』の新聞紹介を頼まれた時、ご自身の詳細な記録を忠実に再現されたことを知り、「事実」を追う新聞記者として圧倒された記憶があります。
 記録のおもしろさは完成作品だけでなく、最近風でいえば「意思形成過程」にこそありますが、それを残す人は多くありません。「文庫所蔵資料解題第二版」によれば、1923年の豊中中学時代から亡くなるまで、約70年間に日記類389冊が残されており、その豊富な内容から「膨大なアイデアあるいはノート群と見立てる」ことも可能とのこと。西山住宅学だけでなく、人間西山の形成過程を発掘する楽しみも出てきました。
 さらに今回のパネル展は、弟子たちが師を「無謬の人」に祭り上げようとしていないことを感じさせ、好感がもてます。
 ひとつは戦時中のコンペ作品「大東亜聖地祝祭都市」。パネル説明は「西山は軍事支配だけでなく、世界の人が集まる都市を主張した。結局は八紘一宇の軍国主義的虚妄のお神輿担ぎに終わったのではないかと自ら悔いを残した」と率直です。「解題」には、「(こんなもん仰々しく展示するなといわれるかも)」との追記もみられます。この正直さこそが西山山脈の地下水をさらに豊かにするものだと思います。
 もう一つは、都心軸に高さ100mの超高層ビル群を連ねる「京都計画1964」です。『アエラ』では「これはある意味で地獄図。むしろみんながまちづくりを議論するきっかけをつくりたかった」という当人の話を紹介したのですが、どうもそう簡単なことではないように思うのです。ご本人は「理想図」と思って発表したのではないかという話をその後何人かから聞きました。今回のパネルでは、「積層住宅群はかえって歴史都市の景観を破壊する」という批判もあったことを紹介するにとどまっています。西山計画学を偉大ならしめている「構想計画」手法の価値を評価する身として、さらなる研究を期待しています。

●オープニング 10月2日(月)10:30から
●セミナー 10月7日(土)14:00〜16:00

 「映像でみる西山夘三と日本のすまい」  
  講 師     松本 滋(姫路工業大学教授)
  コメンテーター 住田昌二(福山市立女子短期大学学長)
●シンポジウム 10月14日(土)14:00〜17:00
 「すまい文化・すまい学ミュージアムのネットワーク」

  司 会     神吉紀世子(和歌山大学講師)
 <第1部> 
  趣旨説明    三村浩史(西山記念文庫副理事長、関西福祉大学教授)
 「西山記念文庫のとり組みとすまい学カタログ」
  文庫紹介    海道清信(名城大学助教授)
 <第2部> 
 シンポジウム「すまい文化・すまい学ミュージアムの夢in関西」
  コーディネーター       三村浩史(関西福祉大学教授)
  パネリスト
  住まいのミュージアム   谷 直樹(大阪市立大学教授)
  産業・技術のミュージアム 庄谷邦幸(桃山学院大学教授)
  ハウジング産業と住文化  佐治郁夫(納得工房) 
  住まい学アーカイブス   中島明子(和洋女子大学教授)

■企画展内容
<企画展趣旨>

 今世紀、日本の「すまい」の生活様式は大きく変容しました。失った伝統もあり魅力的なライフスタイルの創造もありました。「すむ」という営み、「すまい」の多様な創造に向けて、社会の英知と巨大なエネルギーをかつてなく集めてきたのが20世紀の日本といえるでしょう。
 西山夘三(1911〜94)は大阪西九条に生まれ、京都大学建築学科の学生時代から「日本の住宅革新」をライフワークとして、戦前・戦後・現代にわたる激動の時代を「日本のすまい」の調査研究と計画提案、世論づくりに全力を尽くしてきました。その学問業績は高く評価されています。
 60年間にわたって蓄積された膨大な資料をどうするかということから西山記念文庫は誕生しました。以来、6年間の活動・作業を経てようやく資料のほぼ全貌を整理し、皆様に展示できる段階まできました。
 今回、人々の生活空間のすぐれた観察者であり、こだわりの記録者であった西山夘三の資料ライブラリーから、「日本のすまい―20世紀展」をビジュアルに再現します。
 日本人の住文化の軌跡を確かめ、さらに21世紀へのライフスタイルを探ることのできる展示内容となります。

<ゾーン1> 西山夘三とすまい・まちづくり文庫 (パネル約4枚)
 西山夘三の年譜、業績、調査活動地図
 NPOすまい・まちづくり文庫の活動と紹介

<ゾーン2> ライフワーク『日本のすまい』から (パネル約50枚)
 ライフワークであった『日本のすまい』について、原画、写真、調査記録などによるパネルで描く。
 西山夘三は日本人が営んできた生活全体をひろく「すまい」としてとらえた。戦前・戦後・現在までの時代変遷、社会階層、風土の違いからも、それがいかに幅広い存在であったか計り知れない。私たちがもう忘れているすまい、知らなかったすまいを膨大なコレクションから興味深く展示する。
 これらは中・高校生の社会科の学習の場として、また若い世代には住宅や生活史を考える動機付けともなるだろう。
* 伝統のくらし …………… 町家、長屋(京都、大阪、名古屋)
              農家(近畿を中心に全国)
* 戦後の時代 ……………… 兵舎(京都)、バス住宅(大阪)
             応急バラック(大阪、神戸)
              ドヤ(東京、大阪)、開拓小屋(和歌山)
* 仕事とすまい …………… 併用住宅(全国)、舟ずまい(広島)
             炭鉱住宅(北海道、九州)
              社宅(東京、名古屋)、寄宿舎(京都、東京)
* 集ってすむ ……………… 文化住宅(大阪)、アパート(大阪)
             マンション(全国)
* マイホームとは ………… 作家住宅(東京、大阪)、建売住宅(全国)
              現代の邸宅(全国)

<ゾーン3> 西山夘三の人物と仕事 (パネル約20枚、現物レプリカ20点)
 全60年間にわたる研究活動、著作活動、社会活動を通して樹立してきた生活空間計画学の内容を時代・テーマごとにパネルと現物レプリカによって展示。膨大な研究業績に加えて、いまひとつの特筆すべきは自分と家族の生活ををモデルとした多数の著作。時代と対峙して生きてきた一人の人間の証として、また世代を越えた人間へのメッセージとして興味深い。
* 『大正の中学生』 『あゝ楼台の花に酔う(高校・漫画小説)』
   建築学入学以前の中学、高等学校時のマンガ、小説作品
* 『建築学入門・生活空間の探求 上』
   学生時代のデザム研究会、大学を越えたコンペ活動
* 『戦争と住宅・生活空間の探求 下』
    戦前の建築運動:青年建築家連盟、青年建築家クラブ、創宇社
* 『庶民住宅の研究』
  「食寝分離論」を導いた160万字におよぶ学位論文
* 敗戦直後:新日本の住宅・都市の展望を示す
   新建築復刊第1号「新日本の住宅建設」
   第3+4号「新しき国土建設」で各号1冊全部を執筆
* 昭和20年代の精力的な調査研究活動
   開拓村・北海道から中国、近畿各地の農漁村調査報告、各種住み方調査報告
* 高度成長期の構想や提案
  「京都計画」「奈良計画」の構想計画、21世紀の設計(総理府コンペ)
* 『住み方の記』
   すまいの自叙伝、1年間のNHKテレビドラマ化
* 絶筆『安治川物語』
   明治の鉄工職人であった父の一生

<ゾーン4> 西山夘三のスケッチ画集から (パネル約20枚)
 フィールドの記録として、表現の手法として、また人生の楽しみとして、住まいや町並み、
 風景のスケッチに筆とペンを休めることはなかった。
* 滋賀の民家  
* ヨーロッパの風景などの画集  
* 多数の調査旅行スケッチ帳

<その他>
* 『西山夘三と日本のすまい展』カタログの作成
 (展示パネル、資料解題) A4、200ページ予定
* 全著作の出展
* ビデオ映像
  写真20000点、スケッチ1700点のデモ
  西山夘三出演のテレビ
  データベース検索
* 『カタログ・資料解題』、著作、写真の販売


<NPO西山記念文庫>
ご来館の時はあらかじめメールにて、お早めにご連絡ください。
開館日 木・金・土  13:00〜17:00

(ただし休日は休館)
〒619-0224 京都府木津川市兜台6-6-4 積水ハウス総合住宅研究所内
E-mail : npo@n-bunko.org

 
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