| 開校式のあと、韓国の住環境についての講義が行われた。
はじめにソウル市立大学建築工学科のソン・インホ教授による「ソウル市の町並み保存」というテーマで北村の韓屋住宅地についての講義が行われた。以下は講義の要旨である。
北村はもとは貴族や武士など高い階級の人々が暮らしていたが、近代、家を売るために細分化し、韓屋が誕生した。その後改良韓屋として、不便な点を改良したり、ガラスやタイルを利用した韓屋が造られるようになった。さらに1935年頃、宅地と住宅が同時に開発された近代的な都市住宅である都市型韓屋が嘉會洞11番地などで発展し始めた。都市型韓屋は、南北方向に道を中心にロの字型、コの字型で南を向いている。
1984年に韓屋保存地区に指定され、1999年には住民によるまちづくり要求が行われ、ソウル都心基本計画が制定された。2000年10月に北村まちづくり総合政策が樹立され、韓屋登録制度が施行され、都市開発公社による買入が進められた。また、北村まちづくり基本計画も樹立された。
この北村まちづくり基本計画は、延べ230.000坪の範囲を対象に、住みよい北村、訪れたい北村をテーマに、
1)韓屋登録制度(住民の同意に基づき、マスタープランではなく複数の計画案と現状図をかさね、これに基づき歴史的景観区域を形成)
2)韓屋回復支援制度(外観修理の場合は3000万ウォンを最高に総費用の2/3を、新築の場合は6000万ウォンを最高に総費用の1/3を、改築の場合は4000万ウォンを最高に総費用の1/3を負担。伝統工芸や、彫刻家の工房、設計事務所などへの再生例も)
3)韓屋買入と活用(韓屋を買い入れ、歴史博物館として活用)
4)環境整備事業(ゴミ処理場や地下駐車場の整備、歴史探訪路の提案) などを盛り込んだものである。
北村まちづくり元年の成果として、登録された韓屋100戸(12%)、示範買入10戸、 修復支援67戸、地価30%上昇、減室率減少などが挙げられ、北村の韓屋の生命力が回復していると言える。

続いて韓国江原大学不動産学科の、張 喜淳教授により、「ソウル市の高層高密マンション問題」というテーマでの講義が行われた。以下はその要旨である。
韓国の共同住宅は、アパート(5F以上で1000個規模、多くの世帯がおのおの独立な居住生活)、聯立住宅(延べ面積660u以下、4F以下)、多世帯住宅(4F以下で一棟の中に10世帯以内が居住。区分所有が認められる)、多家口住宅(一棟の中で数世帯が独立した居住生活を行う。所有者は家主)の4種に大別される。
韓国は、持ち家政策の影響で賃貸住宅が少なく、韓国全土11,472千戸のうち、5231千戸がアパート、4669千戸が一戸建て、813千戸が聯立住宅、453千戸が多世帯住宅となっている。近年アパートが高層化し、漢江沿いの高層アパートは水辺の景観を損ねている。
日本の約15年遅れで高層化が始まった韓国では、近年建替えの時期になっており、2008年には1/4が建替え対象になるといわれているが、ソウル市内は容積率が強化されたことから、既存不適格なものが多い。たとえば、容積率が400%だったものが250%になった場合、建替えの際の減少分をどうするかが問題である。
江南地区では、容積率400%だった事から、12〜15Fの建物が多く、全体の40〜50%が建替え時期といわれる築16年を迎えている。これ以外にも、1980年代に建てられたアパートが建替え時期を向かえ、ソウルの地価を上昇させるという問題を引き起こしている。打開策として超高層アパートが建設されているが、駐車場から出るまでに20分かかるなど、深刻な交通問題が発生している。
最後に、神戸大学大学院の金 承喜氏により、「ソウル市の低所得者層の居住実態と問題」というテーマで講義が行われた。以下はその要旨である。
韓国では、政策により1990年代から住宅価格が安定化してきた。分譲住宅が中心であり、公共の賃貸住宅は全体の3%に過ぎない。住宅普及率は上昇しているが、持ち家比率は減少し、近年は50%を下回るようになった。全体的な居住水準は上昇しているものの、低所得者層の居住水準は劣悪になっている。
現在、持ち家比率は39.3%で、51%の賃貸住宅のうち、公共住宅は3%、民間住宅は97%である。1989年から住宅問題が深刻化していたソウルなどで永久賃貸住宅が19万戸建設されたが、1993年からは永久賃貸住宅の制度はなくなり、その代わりに5年賃貸後に分譲される5年制公共賃貸住宅と永久賃貸住宅と類似の50年制公共賃貸住宅の2種類の公共賃貸住宅が供給されるようになった。
問題点としては、入居者の負担が増加したこと、低所得者層用に作られたにもかかわらず、家賃の安さから低所得者層以外の一般の市民も数多く入居してしまったこと、低所得者居住地と建設地が離れているため、低所得者層の入居が促進されない、広さ、家賃などに不満を持っている人が多い、などがあげられる。また、開発の際に住居を追われた住民がビニルハウスに暮らしているなどの問題もある。

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