ここでは一部を掲載しています。
第12回フォーラム 2003年11月13日(土) すまい・まちづくりフォーラム関西21
シリーズ全体テーマ 日本の住宅・長寿化への設計図
いつまでも愛され住み継がれる住まい
コーディネーター 三村浩史(関西福祉大学教授、NPO法人西山文庫副理事長)
@愛着がもたれる住宅デザイン
竹山清明(京都府立大学助教授・住宅建築家)
A住んで価値のでる住宅ストックとその流通―日米比較
村山隆英(日本生命保険(相)不動産部課長)
新都市型戸建住宅の研究
森本信明(近畿大学教授)
コーディネーター 三村浩史(関西福祉大学教授、NPO法人西山文庫副理事長)
司会:長期耐用住宅を考えるうえで、本日はまず、ずっと愛着がもたれる住宅デザインについて竹山先生から最近の調査結果を報告いただきます。続いて、既存住宅の流通市場について村山さんから日米比較調査の結果を、さらに協力コンサルタントのD・シヴァーさんにもお話いただきます。
@愛着がもたれる住宅デザイン
竹山清明(京都府立大学助教授・住宅建築家)
[竹山清明氏 講演要旨]
なぜ「愛着がもたれる」ことが大事か
アメニティとは、単なる快適というのではなく、総合的な生活の質が高い、居心地よく暮らせるという意味です。物理的な快適性や安全性とともに、精神的・文化的な満足感、コミュニティの人間関係、適切な経済的負担、これら4側面のバランスが求められます。とりわけ、これからは文化的なアメニティが大事になっていくと思います。人々が心豊かに暮らせる空間という文化的な価値を実現することが、住宅デザインの意義だからです。 そこで、“愛着”とは、安心して暮らせる、その空間にいると違和感がない、落ち着くという状態を実現することです。建築デザイナーの作った住宅の写真をみると、住む人の幸せのためではなく、建築家の名前を売るためにデザインしているような傾向を感じます。
文化的価値とは、愛着・なじみ深さ、美しさ、文化性、歴史性なども含めた、人間の精神的な価値にはたきかける居心地よい空間のことだといえます。
関西における長期耐用住宅を調査
阪神間と京都を対象に、長く住まわれ続けている住宅の質とは何か調べてみました。戦後の住宅は寿命がみじかいので、大正末から昭和前期にかけて建てられた家屋が対象となります。箕面や芦屋に残っている住宅(神戸は震災で被害を受けたので)、そして、京都の下鴨などを調べました。
下鴨の事例では、建物は勾配のゆるい入母屋の屋根、デザインは和風の数奇屋造りが基調になっています。間口が狭いため南北の中廊下型間取りが多見られました。玄関横に応接間があり、美しく住まわれていました。お年よりは、この住宅に愛着をもっておられます。子どもに跡を継いでほしいが、敷地が大きいので、分割一部売却しないと相続出着ない方、イス座の暮らしには合わないので不便だという方もおられました。
箕面の事例では、住宅改造博覧会(昭和10年ごろ)のときに建った住宅が13棟、芦屋文化村では4棟が残っています。箕面も芦屋もデザインは洋風民家、間取りは、公私室型、現代のプランを先取りしており、いまでも丈夫で、愛着をもたれていました。箕面も芦屋も調査家屋は、ほとんどが登録文化財になっています(登録により保存の可能性が大になる)。芸術的作品というわけでありませんが、古くて味があって質のいい住宅に愛着をもって住んでおられることがわかりました。
住宅の外観デザインの好み
関西でも、京都・大阪・神戸では、都市の歴史も違う、好みも違うだろうということで、アンケート調査をしました(2000配布、回答700)。どの様式のデザインが好きかを写真で問いました。その結果、洋風民家への好みが60〜70%。和風について、京都では30%を超えていますが、神戸・大阪では15%程度。モダニズムの様式は5%以下で、嫌いという結果でした。「住みたい様式は何か」では、神戸・大阪では70%強が洋風で、ジョージアン、ビクトリアン、コロニアル様式などでした。
サンフランシスコで見た住宅の価値
“ペインテッド・レディー”(ペンキでお化粧した「美しい貴婦人」)という住宅タイプがあります。19世紀中ごろから5万戸建設され、大震災で焼けて16,000戸ほど残りました。この住宅タイプは評価が高く好まれています。“ペインテッド・レディーの修理法”という本もあり、メンテが標準化しているようでした。
連邦住宅局は、1920年代から持家政策をとりましたが、歴史的様式をもつ住宅に優遇的な融資が行いました。新しい建物より安く入手できて、相対的に価値が高いというわけでした。リモデルの会社の広告には、“What
style is it?”とあり、アメリカ人は住宅様式を知っていることがひとつの素養であり、自分は何様式の家に住むかを意識しているようです。
日本の建売住宅団地―最近の傾向
アメリカの様式住宅を意識したような洋風戸建ては、いま関西・関東の都市部でよく売れています。デザインで売るというコンセプトです。
(事例A)マーク・スプリング・カーサ(ネーミングもすごい、町田市)は、ヴィクトリアンとスパニッシュの建築様式の忠実なコピーです。近隣では土地40坪・建物35坪で3500万円くらいのところが、この団地では、同じ大きさで6000万〜7000万で完売しています。
(事例B)クイーン・アン(横浜市)は、日本とは思えない。クイーン・アン(18世紀アン女王の好み、19世紀以降米国で大流行した優美な住宅・家具デザイン)とスパニッシュ・ミッション(18世紀から米国南西州で普及したスペイン植民地風の建築デザイン)の外観が、それぞれまとまった街区になり、内装はアメリカ型の真っ白、1階は間仕切りが無くてひとつの空間になっています。住宅だけではなく街並みのデザインにも配慮し、ビオトープや無電柱化などに取り組んでいます。しかし、デザイン過剰で混乱しており、まったくの真似ですが、これが日本風にどう練り上げていくのかということですね。
A住んで価値のでる住宅ストックとその流通―日米比較
講 師 村山隆英(日本生命保険(相)不動産部課長)
[村山隆英氏 講演要旨]
日米でちがう住宅流通市場
既存住宅ストック(USED HOUSE、日本では、中古住宅といわれてきました)の流通は、日米でまったく事情が違います。新築の年間戸数では、日本米国も100万戸前後でほぼ同じ。しかし既存住宅の流通戸数では、日本が年間10万戸に比べて、米国は500万戸と大きく違います。なぜかというと、まず住まい手の価値意識のちがい。次に政策のちがいです。1920年代から米国ではさまざまな住宅政策と住宅産業、流通産業の業界団体が呼応して、住宅流通を支えるインフラ
(評価、信用、融資などの制度)が整備されてきたことが注目されます。 さらに、長期耐用財として住み継げるには、@世代をつないで愛着のもてるデザイン、A様式を大事にしながら、暮らしの変化に対応するようにリモデリング、B自分のほしい住宅をみつけられる流通のシステム、C安定したコミュニティ環境、この4つが住宅長寿化の救命装置になっていると思います。
重要なキーワードは、住宅を長持ちさせ住宅の価格も上げるリモデラー(REMODELER、建築の魅力と不動産評価も高める改造をする事業者)、その価値の上がった住宅を流通させるリアルター(REALTOR、不動産仲介事業者)というプロの存在です。リモデラーによって価値を高められた住宅は、リアルターが本当にほしい人たちのところに届ける。住宅の価値が上がっても、流通がうまくいかないと住み継がれていきません。このリモデラーとリアルターの組織的な働きによって、既存住宅の年間取引500万戸が実現しているのです。
リモデラーの役割
長寿化には、ハード、流通、暮らし替えの3つのファクターがあります。ハードについては、愛着のもたれるデザインや欠陥の修理などがあります。「ユニットバスを入れた」など日本の部分リフォームをもう一歩踏み込んで、住まい・暮らしのスタイルを提案している。丁寧な仕事ぶりといえます。住宅部品の標準化やDIYの推進もあります。
既存住宅についても、検査・性能表示制度の整備が確立しています。価値を作り上げていく上で、価値を図る尺度(次頁の表)があります。誰でもアクセスできる情報で、例えば、屋根を改修すると約100万円かかります。そうすると、売るときには60万円相当の価格のプラスになるということ。ですから、自分の暮らしに合わせてお金を投下して、自分の好みに合った住宅にする。売るときには次に買う人がそれを評価してくれる。リモデラーは、暮らしの変化に対応させつつ質の高い仕事をしています。
リアルターの役割
いわゆる日本の不動産の仲介業者とは違います。大小さまざまなタイプがありますが、今回訪問したスモール・ブティック・カンパニー(BOUTIQUE、高級品を売る小店)は、地域に密着した質の高いマーケティングを行っています。モットーは、住宅とは安全を提供し、子どもを育て、資産を増やす貴重な場だということ。暮らし替えを表現する住宅スタイルに注意を払っているということでした。
第一に、お客さんに対して「新しい暮らしを提案する」という基本姿勢があります。市場に出た住宅を斡旋するだけではなく、どういう生活をイメージしているのかというお客様のニーズをよく聞き届けること。第二に、販売のステップでは、実際に何件かの候補物件まで絞られたときに、ステージング(STAGING)を行います。買い手が、候補物件を訪れるときに、リアルターは、家具や什器のディスプレー、時には壁の塗り替えなど、そこでの暮らしイメージを演出します。あなたのイメージしている生活が、この住宅に実現するのですよと、相当な費用をかけて演出することで、売り手と買い手を結びつけています。
第三に、コミュニティとの密着した活動です。今回インタビューしたのは、地域に根を張って、特色ある住宅を扱い、その地域に住みたいと言う方々に紹介を行っている会社でした。その地域に非常に密着しています。アメリカでは学校がとても大事です。会社の売り上げの中から100〜200万円くらいの寄付を学校にしています。ただ単にお客さんとお客さんを見合わせて住宅が売れればいいというのではなくて、地域の特色を維持するために、地元の活動にも参加し寄付もするなど、いろんな意味での住宅の価値を高める地域環境づくりに参加しているのに感心しました。
[D・シヴァーさんのコメント]
新築と既存住宅、第一に、それぞれの特徴を生かすことです。既存住宅の方は完成された近隣があり、いい住宅地であること、歴史的・古典的な建築であること、直し甲斐があることが魅力です。また、新築よりコストがかからないということです。一方、新築の方は、メンテナンス負担が少なく、新しい近隣、現代デザインの建築であることや、平面計画がよいこと、たとえば家族が一緒に過ごせるよう一階がすべて一室であるとかいうことです。共同のプールやクラブハウスがついている、オープンスペースがあるなども魅力要因になります。
第二に、社会的インフラ、つまり既存住宅の評価、信用、融資、税制などにおける政府の法制、それとリモデリングや不動産流通に関する産業団体の取り組み、その両者で長い年月をかけて流通システムが整備されてきたわけです。日本の工務店や不動産斡旋業とはちがう点を見ていただけたらと思います。
(Q&Aの内容は省略)
司会:長期耐用住宅に関する今回のフォーラムはいかがでしたでしょうか。日本でも近年の住宅ストック品質が向上し、平均寿命も50年以上になろうかとしています。そこで世代を超えて愛される住宅デザイン、住み継がれる資産管理や流通のため社会システム整備は、いよいよ重要な局面を迎えることでしょう。講師の皆様、ご参加いただいた皆様ともに、これからも考えていきたいと存じます。ありがとうございました。
新都市型戸建住宅の研究
森本信明(近畿大学教授)
研究の背景
近年新たに「ミニ戸建」問題として都市部の戸建住宅が議論されるようになってきている。その背景には戸建住宅の中層化の進行がある。地価の下落という状況の中で、地域に比較的根付いて活動してきた開発業者が、新しい素材、新しいデザイン、新しい開発方式を求めて競争し、急激に都市部の戸建住宅の様相が変化しつつある。中層化の進展の中で、都市型住宅としての戸建住宅ならびに住宅地像をどのように構築してゆくのかということが社会的な課題となっているのである。
研究の目的と方法
そこで本研究においては、このような最近の住宅需要構造・住宅ニーズの質的変化をふまえ、特に関西における最近の都市型住宅の開発事例を抽出し、その特徴や出現の背景を分析することにより、今後の新しい都市型住宅のあり方に関するヒントを得ることを目的とした。
本年度はその出発点として、なんらかの形で新しさが見られる戸建住宅地の開発事例(これを本研究では「メインプロジェクト」と呼んでいる)を抽出し、そのプロジェクトをとりまく地区の更新過程を整理するとともに、開発業者に対するインタビュー調査、居住世帯に対するアンケートならびにインタビュー調査、周辺における開発状況(周辺開発事例を「サブプロジェクト」と呼んでいる)を調査し、その結果から導き出せる新しい都市型戸建住宅需要者ならびに開発者の特徴を整理することにした。共通調査対象のイメージを図1に示した。またメインプロジェクト(MP)の概要を表1(前頁)に示した。
メインプロジェクトの概要
2−2(本報告書の節・以下同じ)はMPとして、京都市右京区太秦藤ケ森においてZ社が開発した全59区画のプロジェクトを取り上げている。Z社は京都市における有力な地域ビルダーの一つである。その特徴は、区画の一部で「まちなみ住宅」設計コンペが実施されたことである。サブプロジェクトではZ社とならぶ京都市における有力な地域ビルダーであるS社が近傍に実施した全34区画のプロジェクトをとりあげている。ケーススタディではこれら2つのプロジェクトの居住世帯に対するアンケート調査ならびに業者に対するインタビュー調査が取りまとめられている。
2−3は大阪北部で有力な地域ビルダーであるN工務店によって開発された2つのプロジェクトをMPとしている。その一つは大阪市鶴見区の全100区画のプロジェクトであり、他の一つは枚方市長尾における全67区画のプロジェクトである。いずれのプロジェクトも開発規模の大きさを利用して、都市型戸建住宅による「まちなみ形成」に向けてのリーディングプロジェクトとなっている。枚方市長尾の例では、無電柱化もはかられている。ケーススタディでは、N工務店に対するインタビュー調査とともに、アンケート調査をもとにした居住世帯の特徴と、これらMP周辺で行われているプロジェクトの概要がまとめられている。
2−4は寝屋川市と門真市からMPがとりあげられている。寝屋川市清水町の事例は全57区画の開発で、「フレンチスタイル」「スパニッシュスタイル」という2つのファサードデザインに代表される街並みとコミュニティ形成に工夫が見られる事例である。これに対して門真市では、2つのMPが取り上げられている。その1つは全13区画の小規模敷地上にRC3階建の戸建住宅が供給されたもの、他の1つは全15区画に自由プランを採用した3階建住宅の開発プロジェクトである。いずれも周辺地区における小規模開発の中では、「新工法提案型」とでもよべる特徴をもったプロジェクトである。ケーススタディでは、居住世帯のアンケートならびにインタビュー結果とともに、開発業者に対するインタビューがまとめられている。
2−5は東大阪市、八尾市、伊丹市を対象にしている。東大阪市のMPは、準工業地域における開発事例として、全28区画の開発事例が取り上げられている。街区内の道路側だけではなく、隣接地からの景観についても配慮されており、また新金物構法による木造住宅を採用している。八尾市のMPは、周辺の開発よりも1ランク上の商品開発がめざされたもので、全48区画の比較的規模の大きな開発事例である。電柱の処理、駐車場や旗竿敷地の計画手法などに、その特徴がみられる。伊丹市は戦前に阪急によって開発された「新伊丹住宅地」が、その分割開発される時期に入っていることに注目して、その更新にともなう開発プロジェクトをとりあげたものである。ここでは地場の中小業者から大手住宅メーカーなどが入り乱れて開発に参入している。そのうち地場の業者が「デザイナーズハウス」として全4区画を売りに出しているプロジェクトをMPとしてとりあげた。ケーススタディでは、いずれのMPについても、業者インタビュー調査とともに、建築計画概要書をもとにして周辺開発事例と比較を行い、また居住世帯アンケートによって、その特徴が取りまとめられている。
2−6は堺市における2つのMPがとりあげられている。その一つは堺東地区の事例で、駅からの立地条件がよく、まとまった敷地上にもかかわらず、全94区画の戸建住宅地として開発されたものである。内部道路にはインターロッキングも採用され、統一感のある住宅地景観が生み出され、割安感もあり、販売状況も良好であった。MPの2つめは、浜寺地区の事例で、全8区画の小規模開発である。地下室付で「健康住宅」をアピールした開発は、開発業者の開発コンセプトがよく伝わる開発となっている。ケーススタディでは、開発業者に対するインタビュー調査とともに、前者の比較対象としては近傍の分譲マンションがとられ、戸建とマンションとの比較など、居住世帯への詳細なインタビュー調査としてまとめられている。
2−7は大阪府下の地域ビルダーとして1・2位を争うF住宅が開発した住宅地を対象としている。MPとしてとりあげた岸和田市上町地区の開発は全12区画のF住宅としては比較的小規模な事例であり、泉南市岡田地区の例は全153区画の大規模開発である。いずれも自由設計をうりものに、1区画100u以上で、地域の需要をふまえたデザインがなされている。これに加えて、千里ニュータウン津雲台地区における大手住宅メーカ−による3階建住宅5区画もMPとしてとりあげられている。ケーススタディで、開発業者に対する詳細なインタビューを中心に取りまとめられている。
まとめと今後の課題
今回の調査は、新しい都市型戸建の様相の一端をようやくつかみだせたという段階です。今後のいっそう幅広い地域での実態解明が期待されるところです。報告書のまとめにおいては以下のような視点からの整理が行われています。関心のある方は、資料請求を西山文庫までして頂ければ,報告書CD版を実費にてお送りします。
@メインプロジェクトの諸相
(a)住宅単体としての特徴
1)新しい外壁素材や様式、色彩の採用
2)オープン外構を中心とする前面道路と住宅壁面との中間領域の工夫
3)住宅の構法や平面の工夫等がある。
(b)私的・公的空間の中間領域化
(c)まちなみ・居住環境形成型
(d)コミュニティづくり
(e)売建と「設計者」とのコラボレーション
(f)自治体・電力会社との協力
A新都市型戸建の新しい需要者像
(a)まちなか居住指向層
(b)商品コンセプト重視層
(c)まちなみ重視層
(d)近隣関係重視層
(e)衝動買い需要層
(f)若年世帯
Bプロジェクトを手がける地域ビルダー像
(a)適正圏域での活動
(b)開発事業の継続性
(c)地域市場におけるポジショニング
(d)メインプロジェクトをてがける動機
1)都市型戸建の競争
2)企業イメージの獲得
(e)企業間の競争
|