ここでは一部を掲載しています。
<新理事長あいさつ>
すまい・まちづくりの「研究ミュージアム・アーカイブス」
―NPO西山文庫活動の確立めざして―
理事長 安藤元夫
<個人記念館訪問
D>
工学院大学図書館「今和次郎コレクション」の5年間
荻原正三(工学院大学名誉教授)
<新理事長あいさつ>
すまい・まちづくりの「研究ミュージアム・アーカイブス」―NPO西山文庫活動の確立めざして―
理事長 安藤元夫
6月の総会で新理事長に選任されて身の引きしまる思いです。皆様ご承知の通り、昨年来前理事長の広原盛明さんが京都市長選挙に出馬されることになり、場合によっては「ヤバイ」ことになるかも知れないと思っていました。選挙結果はあのようになり、広原理事長時代は安泰のはずでした。しかし、文庫のフレッシュ化をはかってほしいと強く辞意を表明されたので、ここに交代となりました。
三代目理事長として、私は、かねてから構想の「研究ミュージアム・アーカイブス」を主テーマとして、次世代につなげる、あるべき文庫活動の確立を目指したいと思います。
ふり返ってみますと、1994年4月に西山先生がご逝去され、同年7月頃から資料整理に着手してきましたから、文庫活動も実に11年目に入りました。
当初の4年間は、三村運営委員長のもとで、全国の皆様から寄せていただいた寄金で、民間ビルの一室を借りて、苦しい環境ながら資料整理、データベースづくりに明けくれました。96年6月には、西山先生も三十年社史に寄稿しておられた日本の住宅産業を担う株式会社積水ハウスの協賛を得て、現在の同社総合研究所の一角、恵まれた環境に移転できました。ここまでは、まさに「生成期の活動」といえるでしょう。これなくして現在の文庫はありません。
次の6年間は、広原運営委員長(99年11月からNPOに移行してからは理事長)のもとで、多彩な活動を展開してきました。夏の学校、フォーラム、大阪・東京・京都での大展覧会、住宅営団資料の復刻、いくつかの研究会活動など成長期というにふさわしい活動でした。財政基盤としては非力な文庫が、かくまで、すまい・まちづくりの研究とその啓発活動という社会的貢献を果たせたのは、驚異的であり、運営委員会、会員、多くの協力者・機関の力が結集できた大きな成果だと評価しています。まさに「成長期の活動」だったと定義できましょう。
私自身は、心あって文庫活動の初期から参加し、この10年間、データベースの確立や活用方策について、2人の運営委員長・理事長を最も支えてきたメンバーの一人であると自負しております。そして、いずれは「研究ミュージアム・アーカイブス」の活動を確立しようと念じてきましたが、今回はからずも予想より数年早く、私にとっては苦手の表舞台に立つことになりました。
文庫の財政事情はきびしく、三代目で「つぶさないように」という叱咤の声もあがっています。「生成期」「成長期」のあと、より持続的な活動の「確立期」を目指していきたいと考えています。
確立期の活動としては、第一に、これまで好評を得ています研究活動・啓発の多彩な活動を維持していくこと、第二に、文庫の学術資産を新たな見地から活かす出版および展覧会開催などを企画し実現することです。
そして、第三に確立期においてぜひとも見通したいのは、日本で最初ともいえる本格的な「住まい・まちづくりの研究ミュージアム・アーカイブス」への展望です。初代三村委員長はレター創刊号(98年8月)で「コレクションもほぼ整理できました。これらが示す多才な西山先生の人間像は“住まいの南方熊楠”というにふさわしいかも知れません」と述べています。西山先生の残された学術・人間像遺産に加えて、次々の世代の研究資料を整え、さまざまな資料照会や学習・研修指導に応じていくこと、研究交流のユニークな広場となることが目標です。
この展望について、2000年の企画展の準備段階で、中島熙八郎さんは「研究ミュージアムを目指すというが、すでにミュージアム・レベルの活動に入っている」と述べています。いっそう頼られ魅力ある活動体をめざしてがんばっていきますので、会員の皆様方のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
<個人記念館訪問 D>
工学院大学図書館「今和次郎コレクション」の5年間
荻原正三(工学院大学名誉教授)
工学院大学図書館が所蔵する「今和次郎コレクション」について、所蔵に至る経緯とコレクションの構成と特徴、資料を出展した展覧会一覧(2000年まで)などは、本文庫レターbV(2000.3.1)に「今和次郎コレクションの経緯」としてご報告しましたので、本稿ではその後スタートした「今和次郎コレクション委員会」のご紹介と「今コレクション」のこの5年間の活動状況などについてご報告します。
「今和次郎コレクション委員会」の活動
早大教授であった故今和次郎先生の蔵書とスケッチ、調査資料等の一式を、先生が亡くなって約10年後に、工学院大学建築学科がお引き受けして1991年に大学図書館から蔵書目録を刊行しましたが、諸資料の整理がなかなか進みませんでした。そのため、1998年頃から多くの方々のご協力を得て、諸資料の保存整理と研究に協力する新たなボランテイア組織「今和次郎コレクション委員会」を会員組織で立ち上げ、その活動の内容は2000年6月から「今和次郎コレクション委員会レター」を年1、2号発行して報告してきました。2004年5月に最新の第7号を発行しました。
「今和次郎の農村生活・住宅改善と東北地方農山漁村住宅改善調査」
(財)住宅総合研究財団2000年度助成研究(財・住宅総合研究所研究年報28、2002年)
この研究は、上記の「今和次郎コレクション委員会」のメンバー(主査林和子氏)によって(財)住宅総合研究財団2000年度助成研究を受けて2年間にわたって研究されたものです。東北地方農山漁村住宅改善調査は戦前の1935年からの5年間、当時の雪害、大冷害により貧窮を極めていた東北地方農山漁村住宅改善を目的に、(財)日本学術振興会が(財)同潤会に委託して進めた調査研究で、主査に内田祥三(東大教授)、委員に今和次郎、同潤会専任技師(主担当)に竹内芳太郎をあて、最終的には農山漁村住宅標準計案を提示し、その普及のために住宅改善読本の刊行と大工講習会の開催を実施しました。
研究では、従来あまり注目されてこなかったこの調査の経過を明らかにし、その意義と戦後の農林省なが進めた農村住宅改善運動への影響などについて考察を加えています。
『野暮天先生・講義録』今和次郎著の刊行
今和次郎コレクション委員会編(ドメス出版、2002年11月)
今先生が昭和42年春から秋にかけて、日経新聞夕刊に挿絵入りで112回連載した「野暮点先生講義録」の原稿と新聞切り抜きがコレクションに残されていました。その内容は30年以上経った現在でも新鮮であり、鋭い時代感覚と巧みなユーモアに彩られた各篇は、実際に先生の講義を聞いているような錯覚すら覚えるもので、単行本化したいということになりました。幸い先生のご遺族の様々なご尽力とドメス出版・鹿島さんらのご協力により昨年11月に刊行されました。
展覧会「昭和初期の住いと暮らしの考現学―今和次郎に師事した小林孝子の自家調査」の開催
(日本女子大学成瀬記念館―目白キャンパス、期間:2004年6月22日―26日)
日本女子大学で今先生の指導を受けた小林孝子さんの卒業論文は、考現学の手法で自宅にあった衣服、家財道具、台所用品その他すべてを徹底的に調べ、スケッチ、メモ等により記録したもので、当時の中産階級の家庭の住いと暮らしぶりを浮き彫りにしています。この卒論をパネルにして成瀬記念館に展示しました。孝子さんは90歳ちかいご高齢ですがお元気です。この展覧会は日本女子大学家政学部住居学科との共同主催です。
「帰ってきた今和次郎コレクション展」の協力
青森県弘前市百石町展示館
第1回「日本の民家」8月
第2回「津軽(南部)の農家写真展」11月
第3回「風俗と考現学」3月
今先生の故郷の青森県弘前市百石町の旧銀行支店を改修した展示館で、町内有志が街づくり運動の一環として表題の3回の連続展覧会の開催を企画しています。いわば手作りの展覧会ですので、「今コレクション委員会」がコレクション収蔵品を中心に展示パネルの作成などのお手伝いをしています。
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